千葉県南農園で訪日客増 アジアの「コト消費」人気 企業が本腰、自治体との連携も鍵

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駐日大使館員と家族対象のモニターツアーでブルーベリージャム作りを楽しむ参加者=6月9日、木更津市の観光ブルーベリー園(同市提供)

 果物狩りを楽しめる千葉県南部の観光農園で、アジアを中心に訪日客が増えている。日本の果物のおいしさが徐々に浸透しているのに加え、モノより体験を求める「コト消費」の人気もある。投資やPRに積極的な農家の評判はインターネットを通じ、国境を越え拡散中。企業の参入も目立ち、農村部必須の観光スポットになりつつある。

 木更津市に観光ブルーベリー園を広げてきた第一人者の江沢貞雄さん(70)は「昔に比べ中国人などの来園が増えてきた」と実感する。東京湾アクアラインや圏央道経由で羽田・成田空港に近く、江沢さんは「これだけ恵まれたところはない」と地の利を強調。市観光ブルーベリー園協議会長として、台湾での市長の観光トップセールスに同行し、地元産ブルーベリーをPRし「海外での関心は高かった」と手応えを感じた。

 江沢さんの農園では、無農薬栽培を売りの一つにしている。摘み取り時期は今月中旬から9月上旬で、同協議会は今月14日、道の駅「木更津うまくたの里」で開園セレモニーを開く予定だ。

 市観光振興課によると、市内では台湾のブロガーや各国の駐日大使館員らを対象にしたモニターツアーに観光ブルーベリー園を組み込んでおり、摘み取りだけでなく、ジャム作りなどの体験が「珍しい」と好評で、「コト消費」も人気となっている。

 イチゴ狩り発祥の地とされる南房総地域には、東南アジアを中心に近年、訪日客が増加。館山いちご狩りセンターは今年から、英語と中国語、韓国語の注意事項を用意した。JA安房いちご部会の井上英雄会長(71)は「団体より個人で来る人が多い。受け入れ体制を整えていく」と話す。

 ビワ・ブドウ狩りや季節の花摘みを提供する南房総市の道の駅「とみうら枇杷倶楽部」でも、訪日客が見られるように。鈴木賢二駅長(56)は「南房総の果物は大きくておいしく、外国にはなかなかない」とPRに余念がない。道の駅内の店舗に中国版スマートフォン決済「ウィーチャットペイ」を導入。中国人のツアーを取り扱う観光会社へ売り込む。鈴木駅長は「1日でも泊まってもらえたら」と期待する。

 観光庁によると、訪日客が娯楽サービスに費やした金額は2017年に1439億円で4年前の4倍以上。一方で旅行消費全体に占める割合は欧米より低いとのデータもあり、伸びしろは大きいと官民が注目する。

 JTBとJCBが出資するJ&J事業創造(東京)は昨年、約780の農園を紹介するサイト「Japan Fruits」を開いた。観光関連団体が「日本土産に欲しい飲食物」を尋ねた15年のアンケートで、果物は香港などで上位に入ったが、「いつ、どこで何を収穫できるかが知られていなかった」のが開設のきっかけ。今後は予約や通販機能も拡充する。
 農林水産省の15年度の調査によると、観光農園を営む全国6700事業者の平均売上額は年564万円と小規模だが、みずほ総合研究所の堀千珠主任研究員は「地方が観光面で都市と違いを出す上で農業は有力な手段だ」と指摘。さらに客を呼ぶには「地域の他の農園や企業、自治体との連携も鍵を握る」と話した。